火災(家財)保険

賃貸の建物を借りるときは、借家人(入居者)賠償責任保障などを付帯した火災(家財)保険等に加入することが一般的となっています。
民法709条では「故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。」となっています。
しかし、失火責任法で「民法第709条の規定は、失火の場合には適用しない。ただし、失火者に重大な過失があったときはこの限りでない。」とされています。
そして、賃貸の建物を借りた場合には「原状回復義務」が発生しますので、借主は物件を借りた状態に戻して返すことになります。
つまり「他人に損害を与えた人はその損害を弁償しなさい。でも、火災の場合で重大な過失が無いときは弁償しなくても良いですよ。でも、アパートとかマンションとか賃貸で借りている人は原状回復して元に戻してくださいね。」という事です。
具体例で言うと・・・。

保険未加入で火事を起こしてしまったら

アパートを借りている「あなた」が、火災(家財)保険に加入していない状態で失火元となり(重大な過失は無かったが)、お部屋は丸焦げとなってしまった場合の話です。
まず、あなた自身の家財(家具や家電・カバンや靴・洋服や食器・書籍・寝具など)ですが、仕方がありませんので全部あきらめて下さい。
次に、同じ建物に住んでいる他の部屋の人の家財についてですが、火災や消火活動により使い物にならなくなったり、クリーニングが必要になったりします。これは失火元となった人(あなた)に重大な過失がない場合は、弁償しなくても問題はありません。
ただ、法律上の責任が無いと言うだけですので、巻き込まれた他の入居者さんたちからすると「冗談じゃない」「ふざけるな」と言う気持ちにもなりますが、皆さん保険に入っていれば安心です。未加入の人には我慢してもらいましょう。
そして、火事で燃えてしまった部屋についてですが、これは原状回復(元の状態に戻す)して大家さんにお返ししなければなりません。具体的には、広さや状態にもよりますが数百万円以上(場合にはよっては1千万円くらい)のお金を払って弁償します。
もし「あなたが払えないようでしたら、連帯保証人さんに払ってもらいましょう」それでも払えない場合は、誰かに借りるか分割払いをお願いするか・・・検討します。
とりあえず「今日から寝る場所はありません」ので家族や友人などの家に泊めてもらう事になります。着替えもありませんので、同じ服で過ごすことになりますが、燃えてしまった自分の家財を片付けたり、大家さんと今後の支払いについて話し合いをしたり、消防署の現場検証をしたりと、それどころでは無くなります。

保険に入っていて火事を起こしてしまったら

アパートを借りている「あなた」が、賃貸の契約と同時に不動産屋さんから紹介された火災(家財)保険に加入している状態で失火元となり(重大な過失は無かったが)、お部屋は丸焦げとなってしまった場合の話です。
まず、あなた自身の家財ですが、加入している家財保険の保険金の範囲内で全て新しいものに買い替えをすることになります。
次に、同じ建物に住んでいる他の部屋の人の家財についてですが、皆さん保険に入っているようでしたら、皆さんの保険を使って買い替えをしたりクリーニングをしたりしてもらいます。
そして、火事で燃えてしまった部屋については、借家人(入居者)賠償責任保険などの特約を付帯していましたので、この保険を使って原状回復(元の状態に戻す)費用を保険会社から大家さんに払ってもらいます。
とりあえず「今日から寝る場所はありません」が、加入していた保険には臨時宿泊費用(最長で2週間くらい)の特約が付いていましたので近くのビジネスホテルに泊まることにしました。他の入居者さんたちも保険を使ってビジネスホテルに泊まれるようなので安心しました。
数日後、燃えてしまった自分の家財の処分費用も保険の対象となるとのことなので、業者に頼んで処分してもらうこととしました。
目的物件が焼失したため、賃貸借契約は自動的に解約になるとのことですが、保険で転居費用が20万円ほど出ましたので引っ越しをすることが出来ました。
大家さんや他の入居者さんたちには迷惑を掛けてしまいましたが、皆さん保険に入っていましたので「無事に元の生活に戻れた」とのお話しでした。

何か起きてからでは遅い

日常の生活が変わってしまうトラブルはいつ起きるか分かりません。「火を使わない生活をしているので火事は起こさない」と言っている人もいますが、トラッキング現象や他の部屋から失火することなどもあります。何か起きてからでは対応が出来ない事もありますので、賃貸住宅を借りる時は、火災に限らず水漏れや落雷・盗難などによる家財の損害も保障している賠償責任付の保険に加入しておくようにしましょう。

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